2006年12月 9日

瘢痕―殺意の陰に


霧村 悠康 / 文芸社
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医師の孤独感

黒猫の一言:

今回の作品の舞台は、大阪の市民病院
終戦からの建て直しもなく、あちらこちらに
戦火の傷跡が残る建物。

そこに新しく南野という絶世の美女である内科医が赴任してくる。
彼女は、完全完璧主義を心に誓った医師であり
ある目的をもってこの病院に赴任してきている

この病院でも、あってはならない医療ミスや医療過誤が
起こり、当たり前のように隠蔽されている。

とわいえ、前作の大病院ほどの事故もなく医師たちの意識も高い。

そんな病院でも、人生の終焉を迎える方は
数多くいるが いつの頃からか、
患者がなくなると、胸の上に赤か白のバラが置かれるようになった。

ある人は赤、ある人は白・・・
このバラの意味するものはなんなのか?
次第に院内でうわさがながれるようになった。

それと同時に、院長と小児科看護師の神林雪子の
不倫疑惑が流れ始める。

正直、結末のどんでん返しは、予想すらできなかった。

途中までは、前作 前々作を同じような流れに
飽きていたところもあったが、最後まで読みきるとGOOD!!

現役医師が「医の心」に迫る、長編医療ミステリーの決定版と
言っても過言ではないでしょう。

個人的にまさに的を得て納得をしてしまった一文を
ご紹介します。

これは、話の中の市民病院の院長陣内のセリフです。

「現代の医療過誤は、当時の戦争と何も変わらないということです。 力のあるものが、ないものに、大きな被害をもたらすという意味でね。 自分たち一人ひとりの権利、人間としての自分、それを守るために、 国というものとどう対峙するか、という意識に極めて乏しい国民だ。 国という組織の中で、さまざまなことが隠蔽され歪曲されながら、 ものごとが決められていく。いつも間にか、説明もないままに、 法律が決まり、新しい義務が課されていく。 その過程にある問題に、意識の低い国民です。

それと同じことが、医療の現場にもそっくりそのまま言えるような気がする。
手術室しかり、外来の場しかり、病棟しかり、
患者さんの目の届かないところで
知らないうちにまずいことが起こっても、何も外に出ない。
すべては当事者の胸の中。」

まさに、その通り。

そして主人公のこのセリフ

「その時、誓ったのです。 私自身、ミスは許さないと。決してミスをしない医師になろうと。 そして、それは他の医師も、いえ、人の命を扱う職業すべての人が、 そう誓ってしかるべきであろうと。 ミスは仕方がないということで片付けすぎです、この国は。 生きているものに甘く、理不尽に命を奪われた死者には 非常に冷たい国です。 また、それを容認するのも、日本人の弱いところだと思います。」

まあ、まさに今、日本が直面している問題の
根底にあるものを指摘した一文なんじゃないでしょうか?

個人的には、是非ドラマ化していただきたい一作ですね。

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